前科おんな 殺し節(1973年)

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前科おんな 殺し節(1973年)

本作はあの中野貴雄監督が選んだベスト・オブ・キャットファイト11本の6位に選ばれている作品です。闘う二人は東映女番長シリーズの顔ともいえる女優の池玲子さんと杉本美樹さんです。本作で二人の対決シーンは2回あり刑務所の中で行われる決闘と、物語ラストで行われる決闘です。では早速ご紹介させていただきます。


<第一戦>
出演者:池玲子(羽鳥マキ) vs 杉本美樹(谷政代)

池玲子さん演じる羽鳥マキのふてぶてしい態度に対して怒った杉本美樹さん演じる谷政代はマキに決闘を挑みます。ある程度の長さのあるロープ状にした布をお互いの口に加え、先に口から離したほうが負けという特殊なルールで決闘は行われます。


二人共ロープ上の布を口にしっかりと咥えて、割れたガラスを布でまいてナイフのようにしたものを持って、いよいよ決闘が開始されました。お互いに相手を切り刻もうとガラス片をナイフのように振り回します。だがこの時点では喧嘩の強さは政代に一日の長があり、マキは一方的に数か所切り刻まれ、更に政代の攻撃で自分の武器であるガラス片も落としてしまいます。しかし、ここで政代は自分の武器であるガラス片を捨て、素手で構えて「来な」とマキに呼びかけます。しかしこのタイミングで看守に率いられた別の女因の一団が通りかかり、一旦この決闘は休止となります。


この一団が通り過ぎると素手による決闘が開始されます。素手でも地力の強さは変わらずまたもや一方的に政代がビンタやら蹴りやらでマキを攻め立てます。マキもがむしゃらに突っ込んでいきますがまともな攻撃としては政代に全くはいってません。ライン引き(グラウンドに線を引くアレ)が倒れ、石灰が飛び散り、その上に倒されるマキ。誰がどう見てもマキに勝ち目はなさそうです。


見かねて止めに入る女たち。マキはみんなに「あんたの負けだよ、紐を離しな」と言われますが、そんな周りの声を振り切り何度も政代に向かっていきます。その姿は痛々しいほどぼろぼろですが、決して決闘のルールである紐は口から離さないその姿に周りも根性があると認めるような視線になります。石灰の上に大の字に倒れこんでもう立てないのではという状態から、また根性で立ち上がり向かってくる姿を見て、政代は自ら紐を口から離して「私の負けだよ」と言い立ち去ります。

個人的には最初が武器を使った闘いだったところと力の差がありすぎるのが残念でしたが、ぼろぼろになったマキがおっぱいが見えてもかまわずに向かっていく姿で、マキの復讐に対する執念と根性が表現できていて印象的でした。


<第二戦>
出演者:池玲子(羽鳥マキ) vs 杉本美樹(谷政代)

第二戦はまたもやマキと政代の一騎打ちです。ストーリーを補足すると色々あって最終的にマキが復讐を果たして、かたきの男(政代はこの男の情婦だった)を殺します。その復讐の際に手に入れた覚せい剤(数億の価値あり)をめぐり、マキと政代が決闘でケリをつけることになります。お互いにナイフを手に持ち決闘開始。今度は第一戦のようにルールはありません。第一戦では大きく離れていた力の差はほとんどなくなり、互角の展開。ここでマキは刺してきた政代の腕をかわして、タイミング良くナイフを切りつけ政代の腕からナイフを落とすことに成功します。ここで第一戦で政代が見せた行動と同じように、今度はマキがナイフを投げ捨て「きな」といい、素手での闘いでケリをつけるべく、コートを脱ぎ棄て放り投げます


ここから素手での闘いが開始されます。掴み、殴り、蹴り、取っ組みあう激しい闘いが繰り広げられます(もちろん打撃系は嘘パンチですが)。闘っている最中に覚せい剤の入っているアタッシュケースの口があき、覚せい剤の袋が外に飛び散り闘っている二人がぐちゃぐちゃにしてしまいます。仲間たちも数億の価値があったのに飛び散ってしまっている覚せい剤を見て「あーあー」とあきれ半分あきらめ半分の様子。


そしていつものお約束とばかりに浅い川に入って殴り合う二人。さんざんにやり合った後、ふらふらになった二人は覚せい剤の粉がばらまかれた地面に二人揃って倒れこみます。精魂使い果たした二人はもう動くこともできないといった感じです。精一杯闘った二人は汗まみれで満足げですが、仲間達があきれたように歩いてきて、「いいかげんにしないか二人とも、何億になるって薬パーにしやがって」と怒ります。ただどこか嬉しげで本気で怒ったりはしていません。「ここにいる5人なら何でもできるよ」と言ったりして、なんか青春映画を感じさせるシーンでした。


ここで最後に振り返りです。本作の第一戦と第二戦を並べて見てわかることも多いです。まずはマキの成長。最初のタイマンから数々の修羅場をくぐり抜けて全く歯が立たなかった政代と互角(かそれ以上)に戦えるまでに成長しているのが第二戦でしっかりと表現されてます。そして、それを引き立たせるような第一戦と第二戦の決闘の対比演出が素敵です。第一戦は政代が優位な立場なのに武器を捨てて器の大きさを示しますが、第二戦ではその行為に応えるかのように優位になったマキがナイフを捨てて素手での勝負を持ち掛けます。また第一戦の”ライン引きの石灰”と第二戦の”覚醒剤”を絶妙に対比させることによりこの二つの闘いのつながりを際立たせる演出も心憎いですね。個人的に求めるキャットファイト嗜好とはちょっと違いますが、本作は池玲子さんと杉本美樹さんの魅力が引き出された名作だと思いました。


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コメント

コメント一覧 (2件)

  • 2人が汗と土砂に塗れて汚れながら闘う姿が何故かエロいというか美しいんですよね
    クラウディア・カルデナーレがブリジット・バルドーと殴り合いの喧嘩をする「華麗なる対決」やアレナ・ジョンストンとサビーヌ・スンが全裸で殴り合いから取っ組み合う「アマゾネス」と同じくらい好きでした

    • 本作が海外映画の名作「華麗なる対決」や「アマゾネス」と並ぶというのはかなりお好きなのだと言う事がわかります。池玲子さんと杉本美樹さんの2人にはあの時代ならではのエロさというか美しさがありますね。今の時代ではなかなか出せない魅力なのかなと思います。

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