秘録おんな蔵(1968年)

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秘録おんな蔵(1968年)

この映画を個別に取り上げた理由はCF好きには知っておいてほしい”踏み合い”について、非常に丁寧に映画内で取り上げられているからです。
踏み合いって何?て人はこの映画のレビューを読むとどのようなものかよくおわかりになると思いますが、以下の雑学のページ「遊女同士の決闘 「踏み合い」」でも解説してますので合わせて御覧頂ければと思います。

遊女同士の決闘 「踏み合い」

またこの映画では”踏み合い”以外にも当時の遊女の暮らしや風土がわかるつくりになっており、当時の雰囲気をつかむ為にも良い作品だと思います。若かりし頃の田村正和さんや江守徹さんといった名俳優が出演されていることもあり、話もテンポよく見れました。また私にとってのメインである「踏み合い」シーンも非常に満足できる内容で、私と同じようなCF嗜好の人にはお勧めです。本題の踏み合いを紹介する前にちょっとした基礎知識をご紹介していこうと思います。


1)基礎知識その1:太夫や花魁について

この「秘録おんな蔵」で踏み合いを行うのは、いわゆる”○○太夫”と呼ばれている花魁です。花魁とは遊女の中でも位の高い者のことをいいます。そして太夫はその店の象徴ともいえる花魁で、風格も高く他の遊女とは別格です。現代のクラブで言えば店のNo1カリスマホステス、キャバクラで言えばNo1カリスマキャバ嬢といったところでしょうか。


今回踏み合いを行う長谷川待子さん演じる花魁の誰袖太夫の登場シーン。お供を伴い中々の風格です。主人公である安田道代さん演じるお夏がはじめて太夫と挨拶する場面です。


2)基礎知識その2:遊女の着付けについて

次に遊女の着付けについて映画内で説明込みの描写がありちょっと興味深かったので紹介します。矢吹寿子さん演じるお兼(お夏の指導係)は着付けを教えるからと言ってお夏に、着物を一度脱げと言います。言いつけに従いお夏は上半身裸になって違う着物を羽織ると、お兼が帯を締めてくれます。この時お夏は「帯は結ぶんじゃないよ」と教えられます。その理由はすぐに身をもって体験することになります。


帯を締め終わるとお兼がいきなりお夏の帯をもって引っ張りはじめます。すると昔のドリフの時代劇コントとかで「お待ちになってお殿様、あれ~」とやられる腰元のようにお夏はくるくる回ります。そして帯は結んでいないのでそのままするっととられてしまいます。するとお兼は続けてお夏の上着、次は腰巻と次々とはぎ取っていき、あっという間にお夏は全裸にされてしまいます。そこでお兼からなぜ遊女が帯を結ばないかの理由が説明されます。遊女は商売柄、無理心中をしかけられたり、酔っぱらって乱暴する客から逃げる必要があり、その時に帯や腰巻の紐が結ばれていると逃げられないからとのことでした。中に着る腰巻も切りっぱなしで紐がついていない作りになっているみたいです。このことでいつでも脱げる着付けの重要性をお夏は学ぶことになります。最後にお夏はお兼からあとは場数を踏んで覚えていくしかない。これでも見ておきと春画を投げ渡されます。主人公である安田道代さんはとてもきれいですので、サービスショットもあるので画像も交えて紹介してみました。この遊女の基本的な着付けのやり方が遊女同士の踏み合いでもアクセントとして効いてきます。


3)本題:踏み合い
出演者:長谷川待子(誰袖太夫) vs 宇田あけみ(紅梅太夫)

さてここからが本題です。
誰袖太夫の馴染み客の”品さま”が来ないのを不審に思ったお兼は事前に探りを入れさせてました。その結果、宇田あけみさん演じる松葉楼の紅梅太夫に鞍替えしたとの情報を入手。事前に2度までも誰袖太夫のほうに戻るように”松葉楼”にも”品さま”にも申し伝えるが効果がなかったとのこと。そこでお兼は誰袖太夫にその情報を伝えた後「かくなる上は踏み合いでけりをつけるしかないでは」と提案します。誰袖太夫も覚悟を決めて「わかりんした」と了解し、翌日の朝に踏み合いすることが決まります。お兼超グッジョブ!!


そして踏み合いの朝を迎え誰袖太夫と紅梅太夫の二人の花魁がお供を連れて高下駄をはき悠然と登場します。お互いにその店を代表するカリスマNo1の風格を感じさせます。


この時、お兼がお夏に”踏み合い”の説明をしますので、そのセリフを書いておきます。
「いいかいお夏、踏み合いってのはねえ、自分の馴染み客を横取りされた遊女が意地と命をかけて当人同士が恥をそそぐ。いってみりゃお侍のかたき討ちみたいなもんだ。 髷(まげ)を崩されたほうが負けなんだよ」
うーん、まさに踏み合いとはなにかをわかりやすく説明してくれております。まさに女の決闘でCFど真ん中ですね。そして両者向かい合わせに立ち、口上を述べます。まずは誰袖太夫が「わちきの馴染み客”品さま”を横取りしたかどによる今日の踏み合い。否やはありんせんな」と言えば、紅梅太夫も「わちきとて”品さま”に首ったけ。今は”品さま”とてわちきでないと夜も日も明けぬとのこと。もうこの上は踏み合いより他に手立てはありんすまい」と返します。闘いの意思を確認した両者はここから肩かけを脱ぎ、高下駄を脱ぎ棄てて一気に相手に跳びかかります。そして相手を掴んでもみ合う両者一歩も譲りません。


橋の縁での攻防。紅梅太夫が誰袖太夫の帯を力ずくではぎ取ります。そう着付けの基礎知識であったように帯は引っ張ることでとれるようになっているんですね。激しくつかみ合う二人。バランスを崩して倒れた誰袖太夫に紅梅太夫がすかさずとびかかります。しかし誰袖太夫も蹴り返して反撃、両者一歩も譲らぬ攻防戦を繰り広げます。


お互いに着ている着物がからみついて邪魔なのか、同時に上着を脱ぎ捨ててまた激しく組み合います。ここで、紅梅太夫が誰袖太夫を木に押しつけてすかさず往復ビンタ(残念ながら嘘ビンタですが)しかし誰袖太夫も負けじと紅梅太夫の下帯をはぎ取り応戦。帯を取られてはだけた紅梅太夫の胸のサービスカットが入ります。


お互いに髪をつかむ攻防。そこから紅梅太夫が誰袖太夫を突き飛ばします。そこにとびかかりもつれますが、すぐにはなれて両者息を整えます。しかし闘志漲る二人の女。またすぐに相手にとびかかり再度激しい攻防を繰り広げます。


そして紅梅太夫が倒れた誰袖太夫の首元をつかみ地面を引きずります。ここで見える足がなかなかセクシーです。しかし立ち上がりながら誰袖太夫も反撃、闘いは更に激しさを増していきます。お夏もその闘いのあまりの激しさに出ていくようなそぶりをみせますが、お兼に後ろから抑えられます。そうこの闘いはあくまでも一対一の女同士の果たし合い。誰にも止めることは許されません。


両者絡まりながら、なおも激しさはましていきます。服も乱れ白黒ながらもセクシーさ十分です。


そして一瞬の隙をつき、誰袖太夫が紅梅太夫の背後にうまくまわります。そして一気に紅梅太夫の残りの肌着をはぎ取る誰袖太夫。


そして誰袖太夫はその勢いのままに背後から紅梅太夫の髪の毛をつかみ、髷に噛みつきます。そのまま髪留めを一気に口で引きちぎり、左手で髷を結わえている布紐を奪い取り、相手の髷を完全に崩すことに成功します。


誰袖太夫の左手には勝利の証である紅梅太夫の布紐がしっかりとつかまれており、口には髪留めを咥えた状態で紅梅太夫を見降ろします。そして咥えていた髪留めを勢いよく吐き出して勝利の笑顔。にっくき紅梅太夫の上半身をむき出しにしての完全勝利です。


いやーいかがだったでしょうか。
”踏み合い”を知るにはこの映画を見れば万事OKといっていいほど素晴らしい描写でした。互いに格式高い太夫と呼ばれる花魁2人がいざ闘いになったとたん、女の意地とプライドをかけて全力で取っ組み合い掴み合う。それがよく表されており、白黒映画ながら日本映画CFの中で歴史的な価値も踏まえて屈指のシーンと言えるのではないでしょうか。もし私と似たような嗜好の持ち主でまだ本作を見ていない方がいらっしゃいましたら、とてもお勧めできるCFシーンとなっております。

ところでこの踏み合いでは髷を崩したほうが勝ちというルールのため、相手の髪を容赦なく掴み引っ張り合う闘いになります。それがまた素晴らしいですね。遊女の着付け方法からも服のはぎ取りあいが自然に起こることは必然と思われ、まさにこれぞキャットファイトと言える女の決闘ですね。

皆様このようなCF文化が日本にあったことご存じでしたでしょうか。この文化を引き継ぎ、ぜひともクラブやキャバクラの女性同士が客の取り合いで揉めたら、「美容院で奇麗にセットした相手の髪形を、髪の毛を掴み引っ張りあってぐちゃぐちゃに崩してウイッグを引き抜いたほうが勝ち」というルールで闘ってほしいものですね。


(おまけ)
さて踏み合いの原因をつくった”品さま”、この踏み合いを見に来ていたらしくそこをお兼に見つかってしまいます。すかさずお兼からお夏に捕まえて来いと指示がとび、お夏は期待に答えて見事に品さまを捕まえ押さえ込みます。謝りながら金ならいくらでもという”品さま”ですが、誰袖太夫も当然許さず、罰としてお夏に髷を切られて逃げ帰る羽目になります。この踏み合いは誰袖太夫の勝利に終わり、品さまを捕まえて髷を切ったことでお夏のお店での評価UPにもつながり、めでたしめでたしでした。


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