鯨と斗う男(1957年)
出演者:小宮光江(松川ユキ)vs 岡田敏子(朱実)
本作は若き日の高倉健さんも出演されている結構硬派なクジラ漁を扱った作品となります。こんな作品にキャットファイトが?と思いますが、本作はキャットファイト的に注目すべき点が何点かある作品となっております。
まず一点目は本作の映画のポスターです。この時代の映画は独特の味がある写実的なタッチで描かれた絵をベースにしたポスターを使って宣伝していたのですが、本作のポスターの1バージョンに比較的大きく二人の女性が床で転がりながら取っ組みあっているシーンが描かれております。しかしながらネットで書かれている本作の作品のあらすじとかを見てもこのCFには全く触れられていないんですよね。つまりストーリー上さして重要なシーンではないということが伺えます。そんなシーンを宣言に使うというのはかなり異例な扱いと言えるのではないでしょうか。
ここで真っ先に思い浮かんだのが映画CF界で世界的に最も有名な作品の一つである「007 ロシアより愛をこめて(1963年)」です。こちらでもストーリー上の意味はそんなに大きくないのにジプシー女同士の決闘CFがポスターに描かれています。さすがテレンスヤング監督はやってくれると思っていたのですが、なんとそれよりも前に日本の映画ポスターでこのようなことが行われていたという事実に驚きました。アマゾネスものや女因ものであればポスターにCFシーンをのせるのはわかるのですが、このような作品でCFをあえて載せていくスタイルに痺れますね。私もこのポスターをネットで見つけなければ本作を見てみる気にはならなかったということもありキャットファイトシーンをポスターに入れてくれた英断に一人のCF好きとして拍手を送りたいと思います。
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この2つのポスター、双方の左下にご注目ください!!世界的に最も有名な映画キャットファイトの一つに挙げられる「007 ロシアより愛をこめて (原題)007 From Russia with Love」に先んじて日本映画「鯨と斗う男」がCFシーンをポスターに抜擢していました。CF好きの日本人の一人としてとても嬉しい発見でした。
次に二点目はこの映画のタイトルで使われている”斗う(たたかう)”という漢字と読み方です。「キャットファイト学」の「女闘美について」で少し記載しておりますが、この”斗”という文字には厳密にはたたかうという意味はないのですが、同じ1957年に公開された「OK牧場の決斗」と同様に”闘”を”斗”とする表記がこの年代の前後で流行ったのかもしれません。なぜ「メトミ」には女闘美と女斗美という二つの書き方があるのかということの理由を考えた時に、女闘美についてのコラムがのったのも同じ1957年の奇譚クラブということを考えると、これらの流行りにのって女闘美を女斗美と記載することもあったという感じではないかと個人的には推察しております。
そして最後は最も重要なキャットファイトの内容です。こちらは話の流れも交えて簡単に紹介します。捕鯨船の船長と別の捕鯨船の乗組員である高倉健さん演じる若いが有能な銛打ちの対立を軸にして物語は進んでいくのですが、本作でCFを演じるのはこの二人とも色々と絡むヒロイン役の小宮光江さんです。この小宮光江さん演じるユキは酒場カモメ亭で女給として働いていますが、奔放で周りに迷惑をかけるタイプで父親が病気という嘘をついてお店をさぼったり、色んな男に声をかけたりして他の女給達から嫌われておりました。店の中でも若さと女としての魅力があるということも周りの女たちの嫉妬心をあおって嫌われる要因になっていたのだと思います。ユキとCFを繰り広げるのは岡田敏子さん演じる同じカモメ亭の女給である朱実です。ちなみに女給とは今でいうホステスさん的なもので、カモメ亭で飲んでいる横でお客様の接待をする女性となります。朱実はユキの態度に腹が立っていてマダムにもユキの悪口を言ったりしておりました。ある日式典により町民がたくさん集まっているのですが、そんな最中突然カモメ亭の中が騒がしくなり、「けんかだー」という声があがり、人々がそちらに注目し店の中に入っていきます。そしてカメラはカモメ亭の中に移り、いきなりユキと朱実が取っ組み合いをしているシーンが始まります。お互いに組み合ったまま髪を引っ張り合う二人。周りの野次馬たちにも構わず床に転がってもお互いに一歩も引かずに取っ組み合い続けます。そして掴み合いながらビンタをしたり髪を掴んだりと互角でかなり見ごたえのあるCFを見せてくれます。最後は周りから引き離されて終わるのですが思っていたより時間的(と言っても1分強ですが)にもカメラ的にもしっかりと映してくれて動きも演技というよりも自由に喧嘩させたシーンを撮っているかのような感じでかなり見ごたえのあるキャットファイトになっております。二人共闘争心にあふれていて、胸ちらやパンチラもあり白黒ながらも非常にセクシーさも感じられ、白黒映像ということに抵抗がなければ個人的にお勧めできる日本映画キャットファイトの一つになります。まわりに人が取り囲んでいるのに比較的長く止めないで闘わせているというのも高評価ポイントですね。
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盗まれた欲情(1958年)
出演者:香月美奈子(みさ子) vs ?(先輩ストリッパー)
劇団の男が連れ込んだ香月美奈子さん演じるみさ子が、棒でその劇団にいた先輩ストリッパーに襲いかかります。
先輩ストリッパーも竹籠を使って応戦します。しかしお互いにすぐにそれらを投げ捨て、闘いは素手での肉弾戦に変わります。先輩ストリッパーがゴザ?布団?みたいなところにみさ子を押しつけて攻めますが、すぐにみさ子も切り返し相手を押さえこみながらビンタを繰り出します。男が間に入り二人を分けるも、みさ子は邪魔するなとばかりに男をビンタし、更に蹴りを食らわし邪魔ものを追い出し再び女同士の闘いに。そして先輩ストリッパーがみさ子にすかさずビンタをしますが、負けずにお返しとばかりに先輩ストリッパーを押さえこんでビンタを繰り出すみさ子。二人はもつれたまま舞台袖から絡み合ったまま転げ落ち、そこで周りに分けられてしまい闘いは終了となります。怒り収まらぬ2人ですが、そこに団長が帰ってきて、騒ぎに対して一喝します。劇団に入れてほしいというみさ子の根性を認めた団長は、今日からワイが仕込んだるといって了承し、騒ぎは落着します。白黒ながらもまあまあ良いCFでした。みさ子演じる香月さんがなかなかグラマーでいい感じですね。
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白線秘密地帯(1958年)
出演者:三原葉子(トミ) vs 筑紫あけみ(お時)
筑紫あけみさん演じるお時が男と一緒に三原葉子さん演じるトミのところにきます。なぜ秘密を知っているのかと問いかける男に向かって馬鹿にする口調で返すトミ。怒った男に殴られます。怒るトミですが、横から「私がやきをいれてあげる」とお時が前にでてきます。「なにさ、姉御ぶっちゃって」というトミに、お時がビンタします(当たってない嘘ビンタです)。すかさず「やってやるわ」とトミはお時の髪を引っ張り、そのまま二人は揉み合いになります。地面に転がりながら取っ組み合う二人。「痛い」「ちくしょー」と言いながら掴み合います。そしてトミは往復ビンタをお時に入れて、更にお時を地面に押し倒して畳みかけるように何発もビンタを入れます。そこを男が後ろから引きはがして投げ飛ばしトミを踏みつけます。そこに警察がきて、お時と男の二人がその場から逃げます。三原葉子さんは日本映画や成人映画で結構色々な作品でキャットファイトを見せてくれている女優さんですね。
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毒蛇のお蘭(1958年)
出演者:小畠絹子(毒蛇のお蘭) vs 若杉嘉津子(お信)
小畠絹子さん演じる毒蛇のお蘭が男と組んで貴金属商の主人の娘を装って騙そうとしているところに、若杉嘉津子さん演じるお信がやってきます。元々男はお信と組む予定だったのが、元相棒のお蘭と再会したことで乗り換えていたこともあり、お信は怒りのまま主人に二人の嘘をばらします。もう隠すことは無理だと悟ったお蘭は「お信とんだところに現れやがった」と言って立ち上がりお信を蹴り飛ばします。そのまま二人は畳の上で寝ころびながら闘います。そしてお蘭は持っていた小刀でお信を刺し殺してこの闘いは終わります。闘いの最中に二人にカメラがいかない上に、カメラもうまく闘っている二人をとれてないのでちょっと残念な感じでした。
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海女の化物屋敷 (1959年)
<第一戦>
出演者:万里昌代(加代) vs 浜野桂子(ヒデ)
万里昌代さん演じる加代が禁猟の区域に潜ったことで、浜野桂子さん演じる海女の顔役であるヒデと浜辺で言い争いになります。そこで加代がヒデに「このテングサ海女!」と言い放ち、それに怒ったヒデが加代に往復ビンタを食らわせます。一瞬加代はヒデを睨みつけ直後に往復ビンタのお返しをします。そしてそこから二人の海女の肉弾戦が開始されます。お互い、薄地のシャツとパンツ一枚で相手を掴んで浜辺を転がりまわり激しく取っ組み合います。闘いは海辺に入っても続き、シャツが海に濡れて白黒ながらもなかなかセクシーでGOOD。お互いに相手を水に押し付ける闘いになります。お互いに海から上がり、まわりの海女もその闘いを煽り盛り立て、さらに砂浜で取っ組み合います。そこにヒロイン役の女性が駆けつけて、周りにいた男たちが二人の喧嘩を止めに入って闘いは終了します。この作品は白黒な映像ながらキャットファイトはかなり見ごたえがあると思います。また、海女の格好も水にぬれると体のラインが浮き出てなかなかセクシーでいいですね。後の海女シリーズに影響を与えた素晴らしい海女キャットファイトと言える作品で日本映画キャットファイトとしても名作の一つだと思います。
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<第二戦>
出演者:万里昌代(加代) vs 山村邦子(青山ワカ)
これは過去の回想シーンのようです。加代が黒幕の男と小屋で逢引をしていると、そこへ山村邦子さん演じる黒幕男の女であるワカが現場にのりこんできて修羅場になります。ワカが「小娘のくせに!なめた真似して」と加代に掴み掛かり髪をつかみますが、加代もまたワカの髪の毛をつかみ返して応戦します。そしてちょっと揉み合いになりますが、すぐに男に引き離されてしまいます。ワカが銛を手にして二人とも殺してやると言いますが、逆に男に首を絞められて殺されてしまいます。
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